成人・全身型の治療について

 

治療は、原因となる自己免疫反応を薬剤で抑制したり、自己抗体を除去したりして行います。

以前に比べると考え方が変わり、適応は大分、少なくなりましたが、胸腺というリンパ組織を摘出する(胸腺摘除)場合もあります。胸腺摘除は「胸腺に腫瘍がある場合(胸腺腫関連性重症筋無力症)」で当然、行われますが、「AChR抗体陽性の若年発症(およそ40歳以下)女性例で発病およそ1年以内の例」でも考慮されます。

 

以前は、全身型では多くの場合、胸腺摘出と高用量経口副腎皮質ステロイド(プレドニン)漸増漸減投与(図4)が紋切り型に行われていました。 しかし、近年、治療成績などの解析から、「より高用量、より長い期間、副腎皮質ステロイドを服用することと、良好な改善状況には、実は、関連が無い」ことがわかってきました。

 

それほど多くのステロイドを服用しなくても良好に改善する患者さんもいれば、高用量、長期のステロイドを服用しても十分改善しない患者さんもいます。 さらに、患者さんの生活の質(quality of life, QOL)と臨床データの解析では、「副腎皮質ステロイド服用量が多いことは、MG症状と同じぐらいの強さで患者さんの生活の質(QOL)を阻害している(様々な副作用による)」、 「長期のステロイドは抑うつの原因となっており、患者さんの社会的積極性を阻害している」ことがわかってきました。

 

解析の結果、長期の経口副腎皮質ステロイドは1日量で5mg以下が推奨されています。 高用量の経口副腎皮質ステロイドはもっと短期間に、長期の経口副腎皮質ステロイドはもっと少量にすべきであると考えられます(図4)

 

(図4)

(注:MM, 生活や仕事に支障のないレベル; MM or better, MMあるいは症状が全くないレベル; PSL, プレドニゾロン)

そこで、現在の治療の基本的な考え方は以下の様に推奨されています。

 

1.重症筋無力症では治療のしかたに関わらず完治は少ない。

長期的、多くの場合、生涯にわたるため、治療当初から患者さんのQOLを低下させない治療を行う。

 

2.早期から強力な治療を行い、症状をなるべく早く改善する

 

3.カルシニューリン阻害薬などの免疫調節薬を上手く用い副腎皮質ステロイドは少量に留める

 

4.抗コリンエステラーゼ薬(メスチノン、マイテラーゼ)は一時的に症状を軽くするが、病態を改善させる効果はない。

補助的使用にとどめ、免疫治療主体とする。

 

5.胸腺摘出の適応は一部の患者に限られる

現在は早期から強力な治療を積極的に組み合わせて早く症状を改善させ、長期の経口副腎皮質ステロイドは少量とする治療(早期強力治療)が推奨されています(図5, 図6)

免疫抑制作用をピンポイントに絞り、より強力な、分子標的薬の臨床開発も進行中です。

 

(図5)

(注:MM, 生活や仕事に支障のないレベル; MM or better, MMあるいは症状が全くないレベル; PSL, プレドニゾロン)

(図6)

(注:MM, 生活や仕事に支障のないレベル; MM or better, MMあるいは症状が全くないレベル; PSL, プレドニゾロン)

 

 

〔 監修・総合花巻病院神経内科 部長 槍沢公明先生 〕