重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022の基本方針

 

槍沢公明

総合花巻病院 脳神経内科

 

はじめに

全身型重症筋無力症(MG)の治療では,1970年代以降,漸増・漸減法による高用量経口ステロイド療法が普及し,重症例,死亡例が減少した経緯があります.長年にわたり,これと胸腺摘除が順調な成果をあげていると漠然と信じられていました.当時はこのような治療により病態が沈静化し,患者さんの多くが寛解(症状が全くない状態)に向かい,ステロイドは十分に減量,又は中止できると考える医師も少なくなかったのです.MG症状は変動が大きく,評価が難しい面があり,(実際には不十分でも)十分改善していると判定されることも少なくありませんでした.

しかし,我が国で2010年以降,定量的な指標を用い,繰り返し行われた調査・解析(日本MGレジストリー研究と言います)の結果,成人MGの寛解率は現在でも低いままであることが示されました.MGは長期寛解の難しい疾患であり,経口ステロイドはしばしば減量不十分なまま長期化し,患者さんの生活クオリティー(QOL)や心の健康を害する重大な独立要因となっていることが明らかになりました.様々なMG診療の問題点を改善すべく,議論を経て「MG診療ガイドライン2014」が作成されました.

 

MG診療ガイドライン2014

このガイドラインは,患者さんのQOL改善を基本理念とし,経口ステロイドと胸腺摘除を過度に重視する古い治療からの方向転換を図った点で,当時,画期的でした.以降,「症状改善と経口ステロイド量抑制の両立により良好なQOLを早期達成する」がMG治療の方針となっています.QOLと臨床データとの解析結果から,治療目標として「経口プレドニゾロン5mg/日以下で軽微症状(minimal manifestations: MM)レベル以上(MM-5mg)」が設定され,「早期速効性治療戦略」の方向性が示されました.またアセチルコリン受容体(AChR)抗体も筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体も検出できないセロネガティブMGにおける診断漏れ(MGではないという誤診)の改善を目指し,診断基準を見直そうという動きも生じました.

 

MG/LEMS診療ガイドライン2022

2022年,このMG診療ガイドライン2014が改定されました.簡単に言えば,ガイドラインの基本理念・方針は変わらず維持され,2014年以降のデータ蓄積をもとに推奨の内容・方向性はより明解となったといえるかと思います.

2022年の改定ガイドラインではランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)に関する記載が加わり,成人MG,小児期発症MGの記載も詳しくなり,190ページ以上の力作となっています.MG/LEMS診療ガイドライン2022の全体を紹介するのは不可能ですから,このホームページでは,MG治療の基本理念・方針にかかわる「推奨文」のごく一部を紹介しながら解説を加えます.たくさんあるCQ(クリニカルクエスチョン)のうち,CQ5-1-1.治療上の基本的な考え方,CQ5-1-2.早期速効性治療戦略とは何か,CQ5-2-1 非胸腺腫MGに対する胸腺摘除はどのような患者で行われるか,CQ 3-1 MGの診断はどのように行うか,の4つを解説いたします.記載内容はガイドラインの解説文に準じていますので,引用文献についてはMG/LEMS診療ガイドライン2022の該当ページをお調べください.本ガイドラインの推奨文は,〜を行った方が良い,〜を考慮したほうが良い(あるいは〜を行わない方が良い)といったアドバイスを,公表されたデータを元に簡略な文章で示したもので,かつ,ガイドライン作成委員会の総意を反映するものです.

 

第二章 成人期発症MGの治療

CQ(クリニカルクエスチョン)5-1-1.治療上の基本的な考え方

(MG/LEMS診療ガイドライン2022: 50−53ページ)

<推奨文>

①成人発症MGの完全寛解は得難いため,治療が長期にわたることを意識し, health-related quality of life(QOL)やメンタルヘルス(心の健康)を良好に保つように治療戦略をたてる(推奨).

解説:これは最も大切な基本方針であり,旧版MG診療ガイドライン2014の「CQ治療上の基本的な考え方」の推奨文と全く同じ文章が引き継がれています.

前述のように,以前,特に全身型MGでは,漸増・漸減法による高用量経口ステロイド療法と胸腺摘除がステレオタイプに広く行われ,これで病態が沈静化し,患者さんの多くが寛解に向かうと信じている医師も少なからずいました.「ステロイドをたっぷり服用すると副作用は大変だが,いずれは病気が良くなり中止あるいは大幅な減量が可能となるから,何年か我慢して服用しましょう。」といった説明がよくなされていた様に思います.

しかし,2010年以降,繰り返された日本MGレジストリー研究によって,完全寛解に至っている患者さんの比率が(大雑把に)5%前後,薬理学的寛解(免疫治療薬を受けながら症状が全くない状態)が8%前後しかおらず,この比率は免疫治療が行われる前の古い時代,1950-60年台の寛解率と大差ないということが分かりました(図1).同様のことが米国でも報告されています.また,2-3年間,経過を追えた患者さんのデータを見ても,治療により寛解率が右肩上がりに増加するわけではないのです.寛解に到達する患者さんはわずかに生じますが,寛解していた患者さんの再発も生じ,寛解患者さんの数は積み重なって増えていくわけはないのです.つまり,現在,普通に使える治療法の範囲では,寛解に至る患者さんの数を大きく増加させることは出来ないのです.現実には多くの場合,MGはほぼ一生続きます.

そういう訳で,以前は,多くの患者さんにおいて,当初の説明と異なり,経口ステロイドは減量不十分なまま長期化していました.中等量(10〜20 mg/日)以上の長期経口ステロイドは様々な副作用を生じます.データ解析の結果,患者さんのQOLや心の健康を害する要因として,MG症状に加え,経口ステロイドがとても重大であることがわかっています.減量不十分な長期経口ステロイドは容姿の悪化,糖尿病,高血圧,高脂血症,動脈硬化,骨粗鬆症と病的骨折に加え,気分変調や抑うつの原因でもあり,重大なQOL阻害要因となっています.

この推奨文①は分かりやすく言い換えると「MGは,ステロイドの副作用や長期入院など一定期間,我慢して治療すれば治るというような病気ではない.通常,ほぼ一生継続するものなので,最初から,患者さんのQOLや心の健康を壊さないような治療戦略を考えましょう」ということです.

 

②MG治療における最初の到達目標は,「経口プレドニゾロン5mg/日以下でminimal manifestationsレベル(MM-5mg)」であり,これを早期達成するよう治療戦略を考える(推奨).

日本MGレジストリー研究により,完全寛解している患者さんと同じくらい良好なQOLが得られ,完全寛解(増やすのは難しい)より多くの患者さんが到達可能な治療目標としてMM-5mgが提唱されました.いたずらに寛解を目指して,しつこく,たっぷりステロイドを服用させる治療は間違いであり,そんなことをしても寛解は得られません(後述④参照).MM-5mgの早期達成により,社会的活動性改善と伴に明解なQOL改善が得られます.とても大事な考え方であり,この推奨文も旧版MG診療ガイドライン2014の「CQ治療上の基本的な考え方」と全く同じ文章が引き継がれています.

 

③MM-5mgは免疫治療開始から約5年間その達成が増加するが,以後,ほとんど増加しないため,なるべく早期の達成を目指す(推奨).

これは「MG/LEMS診療ガイドライン2022」で新たに加わった推奨文です.治療開始からの時間を横軸にとり,MM-5mgの累積達成率を縦軸にとったグラフを作成(カプラン-マイヤー法と言います)すると,治療開始から3年くらいは増加していきますが,以降,増加の勢いは鈍り,5年を過ぎるとあまり増加しなくなることが分かりました.有効な治療を早期から積極的に選択し,早く病気を良くすることが大切です.

 

④経口ステロイドの最高用量や中等量以上の投与期間はMM-5mg達成に関連しない.

これも「MG/LEMS診療ガイドライン2022」で新たに加わった推奨文です.日本MGレジストリー研究のデータベースを用いた解析で,経口ステロイドの最高内服量(mg/日),20mg/日以上の量の内服期間,10mg/日以上の量の内服期間と長期的な症状改善には関連がないことが分かりました.MMに到達出来ている患者さんの方が最高内服量は少なく,20mg/日以上の量の内服期間,10mg/日以上の量の内服期間ともに短かく,現在の服用量も少なかったのです. 

以前は,経口ステロイドは,一旦,高用量まで徐々に増量した後,極めてゆっくりした減量を行うのが望ましく,この「じっくり・たっぷり」とした経口ステロイドによって症状の再悪化なく,長い目で見れば減量が進み,病気も落ち着くと言われていました.この考え方が間違っていたということです.結局,良くなりやすい患者さんについては「じっくり・たっぷり」投与しなくても良くなり,良くなりにくい患者さんは「じっくり・たっぷり」経口ステロイドを投与しても良くならないのです.良くなりやすいかどうかは,個々のMG患者さんが持っている病態によるのであって,ゆっくりとした経口ステロイドのさじ加減でこれを変えることは出来ません.

 

⑤早期速効性治療戦略(early fast-acting treatment strategy, EFT)はMM-5mgの早期達成に有効である(推奨).

これも「MG/LEMS診療ガイドライン2022」で新たに加わった推奨文です.現在は,速効性があり症状改善効果の高い治療法を最初から積極的に行い経口ステロイドは最初から少なめに用いることが推奨されています.経口薬で速効性があり症状改善効果の高い治療は今のところありませんので,血漿浄化/血漿交換+ステロイドパルス,免疫グロブリン+ステロイドパルスなどを,MG症状がなるべく早く改善するように必要に応じて繰り返します(図2).このような治療の仕方を早期速効性治療戦略(early fast-acting treatment strategy, EFT)と呼びます.日本MGレジストリー研究のデータベースを用いた解析で,EFTが,経口ステロイドに依存した古い治療に比べ,MM-5mgの早期達成にかなり有利であることが繰り返し示されています.気忙しい治療の様に思うかもしれませんが,安定した内服治療を望むと高い内服量が必要となり,その後減量できない場合も生じやすく,MM-5mgの早期達成は難しくなります.

 

⑥漸増漸減による高用量経口ステロイド療法は様々な副作用やQOL阻害につながりやすく,かつ,完全寛解や早期MM-5mgに関連しないため推奨されない(推奨しない).

これも「MG/LEMS診療ガイドライン2022」で新たに加わった推奨文です.既に記載したように,全身型MGでは,漸増漸減による高用量経口ステロイド療法が何十年も行われてきましたが,死亡例・重症例は減らしたものの,結局,寛解率を上げることはできませんでした.④に書いたように,良くなりやすい患者さんについては「じっくり・たっぷり」投与しなくても良くなり,良くなりにくい患者さんは「じっくり・たっぷり」経口ステロイドを投与しても良くならないのです.経口ステロイドは後者の患者さんにおいて,減量が進まず長期化,極めて高率な副作用を生じ,患者さんのQOLや心の健康を阻害してきたのです.また,⑤で記載した様なEFTが推奨治療とされる中で,経口ステロイドを高用量で用いると,その副作用に加え,MM-5mg早期達成に不利にもなります(何年か達成が遅れる).漸増漸減による高用量経口ステロイド療法は推奨されなくなりました.

 

⑦難治性MGとは,「複数の経口免疫治療薬による治療」あるいは「経口免疫治療薬と繰り返す非経口速効性治療を併用する治療(CQ5-1-2参照)」を一定期間行っても,「十分な改善が得られない」あるいは「副作用や負担のため十分な治療の継続が困難である」場合である.

現在すでに,いくつかの分子標的薬が全身型MGに対する保険適応を獲得し使用され始めています.現在,さらに多くの分子標的薬が開発試験中であり,今後,全身型MG治療の領域はまさに分子標的薬時代に移っていきそうです.こういった薬剤は目を見張る様な効果を発揮することが少なくありませんが,高額です.複数の薬剤が競合することで価格が下がることを期待したいところですが,今のところかなり高額な薬剤です.しかし,高額だということだけで使用を躊躇して救える患者さんを救えないのでは困ります.逆に,高額な薬剤を用いる必要がないのに安易に使用するのも避けたいところです.そこで今回,ガイドライン委員会では主治医の先生が分子標的薬を使用するか否かを判断しやすいように,難治例を明解に定義しておこうと考えました.

ガイドライン委員会は概ね1年程度,免疫治療を行なっても「十分な改善が得られない」場合だけではなく「副作用や負担のため十分な治療の継続が困難である」場合,つまり改善する場合でも,そのための治療が重すぎて続けられない場合には画期的な薬剤で状況を打開することを提案しています.副作用とは主に経口ステロイドによるもの,負担とは,頻回すぎる免疫グロブリン静注療法や血漿浄化などを主にイメージしています.

 

CQ(クリニカルクエスチョン)5-1-2.早期速効性治療戦略とは何か

(MG/LEMS診療ガイドライン2022: 54−56ページ)

<推奨文>

1:早期速効性治療戦略(early fast-acting treatment strategy, EFT)では,非経口速効性治療(fast-acting treatment, FT)を積極的に行い,早期改善と経口ステロイド量抑制の両立を図る(推奨).

CQ5-1-1.治療上の基本的な考え方の推奨文⑤にあるように,この様な治療が現在の推奨治療です.FTを初期治療や症状悪化時のみならず,薬剤減量(特に経口ステロイド)やメンテナンス治療の目的においても積極的に用いることで早期改善,改善維持と経口ステロイド量抑制の両立を図ります.長期の安定が得られなくとも,一定期間のMM-5mgを達成出来れば,間欠的なFTにより良好なQOLの継続が可能です.一方,FTを用いずに長期の安定を目指すと,経口ステロイドの用量増につながり,MM-5mg達成は困難となります.

 

2:現状での非経口速効性治療とは血漿浄化療法,メチルプレドニゾロン静脈内投与療法(ステロイドパルス療法),免疫グロブリン静注療法,あるいはこれらを組み合わせた治療である.ステロイドパルス療法を上手く用いる(推奨).

EFTではステロイドパルスの使い方に経験やコツが必要です.全身型MGに対するステロイドパルスは初期増悪(一過性)を伴います.経験の少ない医師・患者の場合,あるいは初期増悪による危険がある場合,投与量は少なめにします.非経口速効性治療には現時点では分子標的薬は含まれません.

 

3:CQ5-1-1.治療上の基本的な考え方の⑤とほぼ同じなので省略

 

4:EFTにおける経口免疫治療では,治療初期から経口ステロイドは少量にとどめ,カルシニューリンインヒビターを併用することが望ましい(推奨).

EFTによる治療の際の経口ステロイドについては初期に高用量を用いるとMM-5mg達成がかえって何年か遅れることが示されています.初期から経口プレドニゾロンは少量(≤10mg/day)とした方が(その分,ステロイドパルスを多く要する)MM-5mg達成は早く,カルシニューリンインヒビターの併用もMM-5mg早期達成に有効です.

 

5:長期的に頻回のFTを要し続ける患者は難治性MGに相当する.

どのくらいの頻度でFT(血漿浄化,免疫グロブリン静注療法,ステロイドパルスを組み合わせた治療)を要すると難治例かという基準は設けていません.主治医と患者さんとの合意で決めて下さい.病院の都合も関与するかもしれません.つまり,総合的に判断して下さい.

 

 

CQ5-2-1 非胸腺腫MGに対する胸腺摘除はどのような患者で行われるか

 

1:胸腺摘除の有効性が期待でき,その施行が検討される非胸腺腫MGは,50歳未満の発症で,発病早期のAChR抗体陽性過形成胸腺例である(弱い推奨).

 

2:50歳以上発症の非胸腺腫MGに対しては,胸腺摘除がfirst-line治療ではない.(推奨しない).

 

胸腺摘除は最も古くから行われていたMG治療と言えるのではないかと思います.初期の報告としては1913年のもの、1939年のものが有名です.2000年ぐらいまでは、かなり高頻度に行われていました.留意しなくてはならないのは,他に治療法が何もなかった時代に見出された有効性であることです.胸腺腫を有するMG患者さんに対しては腫瘍を摘出しなくてはいけませんので,胸腺摘除を行うこと自体に異論の余地はありません.胸腺腫のない非胸腺腫MG患者さんに対する胸腺摘除にMG治療としての有効性があるのかが議論となり,2000年にアメリカMG財団(MGFA)アドバイザー委員の特別委員会が多くの文献を洗い直しました.結論は簡単にいうと「非胸腺腫患者さんに対する胸腺摘除の有効性を結論づけることはできない」というものでした.

これを受けて,非胸腺腫MG患者さんに対する胸腺摘除の有効性を検討する無作為割付試験(介入治療が全身麻酔下の手術であるため二重盲検は倫理的に不可)が企画されました(MGTX試験).困難な試験であるため実現に時間がかかりその結果が論文化されたのは2016年のことでした.経口ステロイド治療+胸腺摘除で治療された患者さんと,経口ステロイドだけで治療された患者さんとどちらの改善が良いかを3年間比較した結果です.その結果について簡単に言えば,非胸腺腫MG患者さんに対し胸腺摘除はある程度有効であることが示されましたが,データをよく見ると,昔のように広く胸腺摘除を行う動機づけとなるような結果ではありませんでした.

経口ステロイド治療+胸腺摘除を受けた患者さんでは経口ステロイド治療を受けた患者さんに比べ,3年後のQMGスコアが約2.8 point良く、3年間の平均経口ステロイド量が1日あたり8mg少ない(22 mg/day 対 30 mg/day)という結果でした.見方を変えると、経口ステロイド+胸腺摘除で治療されても、他の治療を行わなければ,一日約20mgのステロイドを少なくとも3年間、服用する必要があったわけです.寛解(症状がない状態)率を高める様な成果も得られていません.胸腺摘除をしなくても,様々な治療を組み合わせてもっと良い状態にコントロールすることが可能となっている(少なくとも先進国では)現在では,全身麻酔下で行う胸腺摘除はあくまで選択肢の一つであり,これを強く推奨することはできないと我が国のガイドライン委員会では考えています. 

もう一点,MGTX試験について注意が必要なのは,若くない年齢で発症した患者さん(後期発症MG,50歳以上で発症)においては有効性が示されなかったということです。

今後,非胸腺腫例に対する胸腺摘除は,発病から間もないアセチルコリン受容体抗体陽性・若年発症例における治療選択肢の一つとして残りますが,2000年以前のように高頻度に行われることはないと思います.

 

第1章 MG総論

CQ 3-1 MGの診断はどのように行うか(20-24ページ)

*MGの診断基準の改訂案2022を提示した.

 

*MG症状があり,病原性自己抗体が証明されれば診断できる(確実).

 

*MG症状があり,神経筋接合部障害が証明され,他疾患が鑑別できれば診断できる(確実).

 

*MG症状があり,血漿浄化療法が有効で,他疾患が鑑別できればMGを強く疑う(確からしい).

 

*血漿浄化療法が無効ならば,MGの診断を再考し,自己免疫性でない筋無力症候群を鑑別する.

診断基準案2022では,本ガイドラインの基本方針の一つである“false negative(偽陰性,MGをMGではないとする誤診)”を少なくする配慮から支持的診断所見として血漿浄化療法の有効性を加え,判定にprobableを設けました.病原性自己抗体や神経筋接合部障害を十分証明できなくても,臨床症状からMGが強く疑われ,他の疾患が十分鑑別できる場合には,血漿浄化療法の治療反応性をみることによってprobableと判定し治療を続けるというわけです.また,もし血漿浄化療法が無効であった場合は自己免疫性ではない筋無力症候群の可能性を再考することになります.

 

おわりに

以上,基本方針に係る3つのCQについて詳しく述べました.今後,〜〜に関して記載を増やして欲しい,という希望があれば少しずつ内容を増やすことも考えられます.